身元保証会社も年々増えて参りました。全国には200社前後あるとも言われています。
しかし、許認可が不要なためこの身元保証事業の管理監督官庁がないということ。
故に業界と呼べる団体もないために契約内容や提供サービスに関してガイドラインのような規定もありません。
身元保証(人)の捉え方さえ各社で違うことが課題です。なぜ?
それは身元保証に関する法律がないことが要因です。
たしかに『身元保証ニ関スル法律(身元保証法)』はあります。しかしこれは就職時に会社から求められる身元保証に関する法律です。
ゆえに、現在シニア・高齢者が施設入居時や入院時などに求められる身元保証人に関する法律は存在しません。
2020年4月民法改正で個人保証人の保護強化を目的に一部変更されています。
この変更点の中で高齢者が求められる身元保証人にも関係するのが連帯保証人としての賠償額の上限です。
入院や施設入居時、賃貸借契約時にも適用され、身元保証人を求める側は上限額を定めないと契約が無効になります。
もちろん国も
身元保証という社会問題は把握しており議論もなされています。
平成29年には厚生労働省が老人保健健康増進等事業として『地域包括ケアシステムの構築に向けた公的介護保険外サービスの質の向上を図るための支援のあり方に関する調査研究事業』として身元保証等高齢者サポート事業の報告がまとめられています。
私共もヒアリング調査に協力しています。
また、今年のはじめには厚生労働省から委託を受けた調査機関から私たちの制度内容や現状のインタビューがありました。
一方、私たちのような第三者による身元保証会社をシニアや高齢者に情報提供や紹介下さっている介護・医療従事者の方々が異口同音に仰る【紹介責任】。
各現場で高齢者と接し、利用者や患者から信頼され相談を受け、高齢者の状況を考えて、身元保証会社を紹介する立場としてはその会社が紹介しても良いところか気になるところです。
そこで今回は身元保証会社が必ず経験している場面での見解と対応をご紹介します。サ高住や有料老人ホーム等の入居契約では身元保証人・連帯保証人と共に【返還金受取人】も立てる必要がある場合があります。
返還金とは?
介護付き有料老人ホームなどへの入居時には初期費用として「入居一時金」が発生することがあります。入居一時金とは、契約時に数年から10数年分の家賃や管理費などをまとめて先に納める前払金のことです。入居一時金の額は、施設によって数十万円から数千万円とかなりの幅があります。
そして納めた入居一時金は、数年から10数年をかけて消費・償却されていきます。
この償却期間も施設によって異なります。
例えば、償却期間が12年と契約で決まっている施設において入居者が仮に入居後5年で亡くなった場合、入居一時金の残金は返還されます。
この時、本人は亡くなっているので代わりに残金を受取る人が必要になります。この人が返還金受取人です。
因みに、死亡ではなく何らかの理由での退去時は本人に残金は返還されます。
また、上記の例で仮に償却期間である12年を過ぎて入居していても追加の家賃などを求められることはなく、退去を求められることもありません。
つまり、償却期間を超えて入居して長生きするほど、結果トータルでは費用が抑えられる、抑えられたという考え方も出来ます。
少し話が逸れました。第三者身元保証人を必要とする高齢者の場合は、返還金受取人も身元保証会社がなることが多いように感じます。
私たちも数名の会員様の返還金受取人になっています。
もちろん第三者が身元保証人になるのと同様に返還金受取人になっても問題はありません。
しかし、仮に施設入居者が亡くなり返還金が発生して私たちが返還金受取人としてそのお金を受け取ってもそれをそのまま頂く事は当然出来ません。
もちろん頂くつもりもありません。
なぜならこのお金は相続財産になるからです。
仮に相続人の一人が受取人になっていたとしても同じでそのままその相続人が受取ることは出来ません。
生命保険の死亡保険金受取人とは全く違います。
つまり、受取人の権利として取得は当然に出来ないのです。
言い方を換えれば、法的には返還金受取人として署名したからといって、それは相続あるいは贈与をする旨の解釈になりません。
では私共ではどのように対応しているのか?
私たちが返還金受取人になった場合は、このような書類を会員さんと交わしています。
つまり、受け取った返還金は法定相続人に渡すのです。
冒頭に述べた通り、身元保証(人)の捉え方が様々である現状の中、身元保証会社として、身元保証人に関することを法的にも道義的にも深掘りしているのか、会社の姿勢としてどのように考えているのかが、この返還金について質問するだけでも分かるような気がします。
介護保険制度によって第三者介護が当たり前になったように、身元保証人も第三者が担う事が当たり前になることを目標に、将来業界と呼べるようになった時のために健全な業界づくりに少しでも寄与すべく努力してまいります。