今回も身元保証に関するお話です。
前々回:返還金受取人でも触れましたが、『身元保証ニ関スル法律(身元保証法)』はあります。
しかしこれは、就職時に会社から求められる身元保証に関する法律です。
ゆえに、現在シニア・高齢者が施設入居時や入院時などに求められる身元保証人に関する法律は存在しません。
では、そもそも身元保証や連帯保証の始まりは?
昔々、丁稚奉公人の離職(逃亡)防止や担保のために身元保証人を付けたのが始まりと言われています。
そして時を経て、明治31年に制定された民法において規定された【家制度】が影響していると考えられています。
家制度とは?
戸主・家長と言われるその家族を代表する者に、家の統率権限を与えていた制度です。
この制度は既に廃止されていますが、民法では今でも親族の互助義務・扶養義務者など扶養に関することが定められています。
言い換えれば、今でも規定として家族は助け合いましょうと言われているわけです。
親族が生活保護を受給していた有名人が、その親族を助けるべきではないのかという議論が巻き起こった報道が数年前にありましたね。あのニュースはまさしく、親族の互助義務などをベースにした議論でした。
このような背景により現在の入院時や高齢者施設入居時、賃貸借契約時などに身元保証人・連帯保証人が求められています。
つまり法律ではなく、慣習・慣行なのです。
そして、家制度の影響なのか身元保証人は家族がすべきという考えが残っているのです。
一方で、家族を取り巻く環境は働き方改革や価値観の多様性など様々な社会変化により変容し、身元保証人を立てられない人が増加している現実が存在している。ここに矛盾が生じています。
家族を取り巻く環境の変化に対応するものとして介護保険があると思います。
かつて介護は家族介護が当たり前でした。
今では介護保険という公的制度により第三者介護が当たり前の時代になりました。
つまり、昔は家族の役割であった・家族がすべきであった介護が今では、第三者という外部に委託できるようになったわけです。
社会で支えるという仕組みです。
2000年に介護保険制度が始まり20年が過ぎ、今では社会にとって必要不可欠な仕組みです。
同じく2000年に始まった成年後見制度もそうですね。
この二つの制度が、高齢者の生活を支える仕組みの一つだと言われています。
厚生労働省が構築している施策の『地域包括ケアシステム』ではよく植木鉢の図を使ってそれぞれの役割が表されています。
植木鉢では、介護や医療など高齢者の生活を支えるサービスは植物に例えられており、その植物が育つためには介護保険や成年後見制度に例えられている養分を含んだ土、住まいに例えられている植木鉢、そして何よりも重要な要素としてお皿に例えられている本人の選択と本人及び家族の心構え。
このお皿の部分に、身元保証人があります。なぜ?
介護保険や成年後見制度そして民間サービスも、大きく言えば民法も家族・親族がいる前提で作られています。
そのために、公・民を問わず制度を利用する時や各種契約時には、本人以外の同意や緊急連絡先など、いわゆる家族の役割である身元保証人が欠かせない現実があるからです。
つまり、住まいに例えられる植木鉢が賃貸や老人ホームなど高齢者施設なら必ず身元保証人が必要であり、土や植物に例えられる介護や医療、その他生活を支援するサービス時には、身元保証人や緊急連絡が必要です。
ゆえに身元保証人が居てこそ本人やその生活を支えるサービスが成り立つわけです。
よって、身元保証人はお皿であり、根底なのです。
そして、家制度により身元保証人は家族がすべきという考えが残っている影響で今まではそれを家族が担ってきましたが、家族を取り巻く環境は様々な社会変化により変容し、身元保証人を立てられない人が増加している現実が存在している。
この矛盾が社会的に大きくなり、それを支える第三による身元保証事業社が数多く立ち上がっています。
第三者が身元保証人になることに問題はありません。
なぜなら法律ではなく慣行・慣習だからです。
介護保険も、家族がすべきと考えていた介護を今は第三者に委託しているのと変わりありません。
私たちこうべつながりのビジョンでは身元保証人も第三者保証人が当たり前になることを目指しています。
ところで…
厚生労働省は介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はないとして、身元保証人がいないことを理由に介護保険施設が入所を認めないのは正当な理由に該当しない。と見解を示し、全国の自治体に対して適切な指導や監督を行うよう要請した。と新聞などであります。
しかし、なぜそれでも現実には求めるのでしょう?これには理由があると思います。
病院は病気を治療すること、施設は安心した生活を提供することが役割です。
もし身元保証人がいない方が亡くなった時、ご遺体は誰が引き取るのか?
施設がその方を火葬して死後事務をする?それらにかかる費用は誰が支払う?
そうなってから家族を探す?家族から拒否されたらどうする?
そもそもこれらのことは役割が違うし責任を負えません。
だからこそ法令や法律ではなく、現実として身元保証人が必要で求めるのだと考えます。
また、違った観点で身元保証人の重要性を紹介します。
このたび成人年齢が引き下げられて18歳以上は、親の承諾なしで一定の契約が可能になりました。
その一方で、高齢者は子どもや親族の同意・承諾がないと契約が成立しない傾向が強くなっています。
このように時代と共に家族の形、死への考え方、男女格差、価値観の多様性…ずいぶん変わりました。
最近話題に上がる事が多い「ジェンダー」→「社会的性差」と訳されます。
例えば、家事は女性がやるものといった社会的イメージや役割分担のことです。
このような性別による差別や不平等をなくそうとする世界的な動きです。
僕はこの考えや動きを家族という社会的イメージや役割分担にも適用してほしいと考えます。
身元保証人は家族がするべき。こんな社会的イメージを変えたいです。身元保証人は必要だと思います。
でもそれを家族がするべきだとは思いません。
身元保証人も第三者保証人が当たり前の社会になることは可能だと考えています。
それを示すかのように、現在僕たちのような法人が全国で増えています。